コロナ後遺症に鍼灸を

コロナ後遺症とは? ── 最新の知見と対処法

はじめに

新型コロナウイルスの感染が落ち着いてきた今でも、「体の不調が続いている」という声が後を絶ちません。

感染から数週間〜数カ月経ったあとも、強い倦怠感や息切れ、集中力の低下などが続く「コロナ後遺症(Long COVID)」は、今や社会問題となっています。

本記事では、医師による専門的な研修会の内容を元に、最新の研究データと実際の臨床現場から見える「コロナ後遺症の実態と対処法」について解説します。


1. コロナ後遺症の実際 ── どんな症状があるのか?

代表的な症状

  • 入浴や軽い運動で1日中寝込む

  • 少しの力仕事で強い倦怠感

  • 息切れや筋肉痛が長引く

  • 頭がボーッとする(ブレインフォグ)

  • 痛みやしびれがあるのに検査では異常なし

「もぐらたたき」のような症状変動

症状は一定でなく、出たり消えたりするのが特徴で、「今日は良くても明日はダメ」といった波があるため、日常生活や仕事にも大きな影響を及ぼします。


2. コロナ後遺症はどれくらいの人に起こる?

  • WHO:感染者の10%前後が後遺症に

  • オランダ研究:約12.7%がLong COVID

  • 日本の一部地域調査では48.1%が何らかの後遺症

  • 筆者の臨床感覚では、感染者の約半数に軽度な後遺症が見られる


3. 重症化のリスクと経済的インパクト

  • アメリカでは最大400万人が仕事を失い、32兆円規模の損失

  • 日本でも18億時間の労働損失、GDPの1.6%にあたる約11兆円の損失が想定されています


4. 特に注意が必要な「PEM(労作後の体調悪化)」

PEMとは、「買い物に行った翌日、急に体が動かなくなる」「ストレスの数時間後に寝込んでしまう」など、軽い活動後に遅れて症状が悪化する状態です。

リハビリで悪化することも多く、「散歩くらいしろ!」は禁物!

WHOも「PEMがある場合は、運動は避けるように」と明言しています。


5. 大切なのは「生活療法」 ── 無理しない・させない

生活指導の基本

  • 散歩はPS(重症度)3以上になってから

  • 「頑張れ」は逆効果

  • 日光浴や簡単なストレッチから始める

  • 症状に応じて「PSスケール」を目安に運動量を調整


6. 鍼灸や漢方の可能性──東洋医学の視点から

現代西洋医学では、コロナ後遺症に対する「特効薬」はまだありません。しかし、東洋医学では古来より原因不明の倦怠感や長引く不調に対応する知恵があります。

漢方・薬膳のアプローチ

  • 柴胡加竜骨牡蠣湯などの漢方薬
  • 鶏肉、黒キクラゲ、クコの実などを用いた腎虚改善の薬膳

鍼灸の有効性

  • 大腰筋・脊柱起立筋へのアプローチで自律神経症状が改善
  • 合谷、足三里、外関などが有効

7. 日常生活でできること

  • 感染後2カ月は「とにかく無理しない」

  • PEMがある人は「活動を増やさない」ことが第一

  • 症状がつらい時は、「気のせい」ではなく専門家に相談を


まとめ

コロナ後遺症は、決して「気のせい」ではありません。科学的根拠に基づき、無理なく、そして心と体をいたわりながら回復を目指すことが大切です。

もし「なんだかおかしい」「調子が戻らない」と感じたら、一人で抱えず、専門医や東洋医学の知見を持つ医療者にご相談ください。


参考リンク

 

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